◆オーダースーツ概説
オーダースーツあるいはオーダーメイドスーツと呼ばれる注文服は、次のマシンメイドとハンドメイドの2種類に大別されます。
1. マシンメイド (イージーオーダー/パターンオーダー)
A:イージーオーダー
イージーオーダーはシステムオーダーなどとも呼ばれ、もともとは某デパートが用いた工場システムによるオーダースーツの
商品名ですが、一般に広く普及し、普通名詞として使われています。
(イージーオーダーの語源については、 『
Bespoke Site Club 』 で管理人氏が詳しく説明されています。)
イージーオーダーのコンセプトは、コンピューター管理された工場システムを駆使し、デザイン・スタイルの多様化、スピード化、
省力化、低価格化を実現し、顧客1人1人の体型に対応することです。
フルオーダーとはことなり、顧客専用の型紙を作ることはしませんが、その代わりに、日本人の体型を数百通りにパターン化
したものの中から、最も顧客の体型に近いパターンを抽出し、細部を調整して仮想型紙を作成し、これに基づいて生地を裁断・
縫製します。
イージーオーダーは、通常は仮縫いを行わないのですが、行う場合もあります。
イージーオーダーの仮縫いはゲージ服により行います。ゲージ服とはサイズ測定用のスーツのことですが、既製服などの現物
スーツを用いる場合と、各パーツに分解出来る正に仮縫い状態の半製品スーツを用いる場合とがあります。
後者のタイプの仮縫いの方が緻密な調整ができます。
このようなゲージ服を用意しておき、顧客のサイズに一番近い寸法のものを着てもらい、体型補正をします。つまりあたかも
仮縫いをしたのと同じように、ゲージ服により事前に体型を補正したうえで採寸します。
既製服と同様に機械により縫製しますが、このようにシステム化された工場で顧客の身体データに基づいて縫製しますので、
既製服にはない着心地の良いオーダースーツがお手頃価格で購入できます。一般にオーダースーツと呼ばれている商品は、
その大部分がイージーオーダーです。
B:パターンオーダー
パターン・オーダースーツは、身長・体型ごとに基本となる型紙が用意されていて、顧客の体格に合わせてこれを拡大縮小し、
各部の長さを調整して作られます。
顧客は、そのブランドの色々なモデルの現物スーツの中から気に入ったスーツを試着して選び、体型補正します。
パターンオーダースーツはシルエット・デザインを崩さないことが前提ですので、原則として、身体に合わせて調整できるのは、
上着丈、袖丈、ズボンのウエストと股下に限られます。
イージーオーダーに比べ、補正できる範囲がかなり制限されますので、標準的な体型ではない人には、このオーダー方式は
向きません。しかし最近では、ブランドのシルエット・デザインを尊重しながらも、実質的にはより細かく補正ができるイージー
オーダーの手法で作り、パターンオーダーと称する場合が多々あるようです。
2. ハンドメイド (フルオーダー)
ハンドメイドフルオーダーは、顧客が希望通り自由にデザイン・スタイルを決められます。裁断・縫製は、全て仕立職人の手により
行われ、丁寧に仕上げられます。
イージーオーダーとはことなり、ハンドメイドオーダーはその人の体型と全く同様の型紙をつくります。
つまり顧客の体型を忠実に反映したその人専用の型紙を起こし、この型紙に則って裁断し、またさらに製作過程において、
仮縫いと呼ばれるスーツの半製品を一度作ります。この半製品を顧客に試着してもらい、入念に細部の調整をして縫製します。
イージーオーダーの仮縫いが、実際に顧客のスーツとなる現物生地の裁断前に、ゲージ服によって行われる仮想仮縫いで
あるのに対し、フルオーダーの場合は裁断後に、現物生地によって仮縫いが行われます。
芯地・裏地・釦等付属品も高級品が使われます。
このようにして出来上がったスーツは、まさにオーダーしたその人だけの世界に1着のスーツといえます。